ライブラリで利用されている関数, 変数をカプセル化する仕組みが モジュール (module) である. 大規模なライブラリを作成する場合は, いままでの節に述べたような 名前の問題を回避するために, module を用いるとよい.
まず module を用いたプログラムの例をあげよう. これは 12 章で詳しく説明した スタックを実現しているプログラムである.
module stack; static Sp $ Sp = 0$ static Ssize$ Ssize = 100$ static Stack $ Stack = newvect(Ssize)$ localf push $ localf pop $ def push(A) { if (Sp >= Ssize) {print("Warning: Stack overflow\nDiscard the top"); pop();} Stack[Sp] = A; Sp++; } def pop() { local A; if (Sp <= 0) {print("Stack underflow"); return 0;} Sp--; A = Stack[Sp]; return A; } endmodule; def demo() { stack.push(1); stack.push(2); print(stack.pop()); print(stack.pop()); }
モジュールは module モジュール名 〜 endmodule で囲む. モジュールの中だけで使う大域変数は static で宣言する. この変数はモジュールの外からは参照もできないし, 変更もできない. 大域変数の初期化は宣言に続いてたとえば,
static Sp $ Sp = 0$のようにおこなう. なお上の例にはあらわれないが, モジュールの外の大域変数は extern で宣言する.
次に来るのが localf を用いたモジュール内の関数の宣言である. ここでは, push と pop を宣言している. この宣言は必須である.
(大域) 関数 demo では, モジュール stack の中の 関数 push と pop を
if (Sp >= Ssize) {print("Warning: Stack overflow\nDiscard the top"); pop();}ではモジュールの内の関数 pop を呼び出している. これをみればわかるように, モジュールの内部の関数を呼ぶには普通の形式で呼び出せばよい. モジュールで用いる関数名は局所的である. つまりモジュールの外や別のモジュールで定義されている関数名と同じ名前が 利用できる.
なお asir では局所変数の宣言は不要であった. しかし上の例を見れば分かるように, local A; なる形式で 局所変数を宣言できる. キーワード local を用いると, 宣言機能が有効となる. 宣言機能を有効にすると, 宣言されてない変数はロードの段階で エラーを起こす. 変数名のタイプミスによる予期しないトラブルを防ぐには, 宣言機能を有効にしてプログラムするのがよい.
モジュール内の関数をそのモジュールが定義される前に 呼び出すような関数を書くときには, その関数の前でモジュールを次のように プロトタイプ宣言しておく必要がある.
module stack; localf push $ localf pop $ endmodule; /* ここまでがプロトタイプ宣言 */ def demo() { print("----------------"); stack.push(1); print(stack.pop()); print("---------------"); } module stack; stack の定義実体 endmodule;
宣言がないと, たとえば demo の実行時に push が undefined function エラーとなり停止する.